囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。
26話「王子、作戦失敗」
26話「王子、作戦失敗」
「榊穂純?誰だよ、それ。人違いなら帰ってくれ」
「おまえは異世界人なんだろう?」
「……あぁ、それが前の世界での俺の名前か。覚えてないんだ。悪かったな」
「謝って欲しいのはそこじゃない。おまえらはここで何をしてる?」
「おまえじゃなくて、俺の名はセクーナって言うんだよ、王子様」
「セクーナ、質問に答えろ。これは王子からの命令だ」
痺れを切らして声を上げたのはリトだった。先ほどからセクーナの態度が気に食わずイライラしていたのだろう。彼の眉間には濃い皺が出来ていた。いつもならば、ラファエルも彼に落ち着くように言うが、今はリトと同じ気持ちだったので止めずに見守る。
そんなリトの剣幕にもセクーナは全く動じていないようで、ニヤニヤとしてベットの上で片膝を立てて座っていた。
「何もかにも俺はここで寝ていただけですよ。一緒に住んでいる奴らは飲みにでも行ったんじゃないですかね?」
「では、向こうの部屋にある檻はなんだ。数が多いが、何を捕まえている」
「動物ですよ。ウサギや鳥などを捕まえてペットとして売るんですよ。違法じゃないですよね?」
「しらばっくれるなっ!あの檻には微かに魔力が残ってるんだよ」
大声でそう怒声を浴びせたリトは、勢いあまってセクーナに斬りかかりそうになった。それを、ラファエルは手を差し出して止める。
そして、ゆっくりと彼に近づく、剣先を向けられているというのに彼は余裕の笑みを浮かべている。何か逃げる秘策があるのだろう。ラファエルは警戒を怠らずに、手に魔法をため込んでおく。
「俺達もバカではないのでね。ここに潜入するまで、いろいろ調べさせてもらったよ。セクーナ。君がやっている事は、妖精の密売。そうだね」
「なんだバレてんのか」
セクーナはチッと舌打ちをして悔しそうな口調だったが、口元はニンマリとしている。この男は何を考えているのか。全く思考が読めないな、とラファエルは思った。