囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。
大きな音が遠くで鳴ったような気がした。それは、魔力が弾けるような音。地の底から響く不気味な音だった。
朱栞はハッとしてベットから飛び起きた。慌てて窓に近づき外を見渡すが、そこには暗闇の城下町と静かな空気があるだけだった。聞き間違いだろうか。いや、微かに魔力を感じるような気がした。
朱栞は窓を開けて、夜空に向かって飛び込む。
「あ、羽が……っ」
朱栞はハーフフェアリ。妖精は夜になると魔力が下がる。そして、朱栞は人間の姿になる。
そんな事はわかっていたはずなのに、焦りでそれを忘れてしまっていた。
ガクッと体が地面に向かって降下する。
何とか1度体制を戻したが、それでも飛ぶことは出来ずに、朱栞の体は無残にも地面にも叩きつけられる。
「……………っっ!!」
ドンッという音と共に、全身に鋭い痛みが走る。あまりの痛さに、声も出ない。
それでも体を起こして、立ち上がろうとした。
「何の音だ?何かが落ちのか?」
「あそこに、誰か倒れているぞ!」
城の守衛だろう。男性が魔法の明かりをこちらに照らしながらかけてくる。
そして、そこに居たのが朱栞だとわかると、驚きながらも怪訝な顔でこちらを
見た。
「ラファエル様の婚約者様。こんなところで何をしているのですか?」
「まさか、夜の散歩中に落ちたのですか。ハーフフェアリ様は、まだ夜の飛行には慣れてらっしゃらないのですね」