囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。




 倒れている朱栞を見ても手を差し伸べる事もなく、その守衛達は呆れ半分、ニヤつき半分といった表情でこちらを見下ろしていた。この人達はハーフフェアリである朱栞とラファエルが婚約を結ぶ事に反対していた人達のだろう。
 朱栞は怒りを感じる前に、焦った様子で彼らに話しかけた。


 「先程の爆発音を聞きましたか?あれは何だったのですか?」
 「爆発音?」
 「そんなものは聞いていない。寝ぼけたんじゃないんですか」
 「そんなはずは。ラファエルは、彼から連絡は」
 「ラファエル様はまだご帰宅されていない。婚約者様はベットでも温めてお待ちしていればよろしいのでは。お飾りの異世界人なのですから」
 「…………」


 そこまで言われてしまっては、朱栞は何も言い返せない。
 「わかりました。お騒がせしました。警備、ご苦労様です」と立ち上がり優雅に言う事しか出来なかった。けれど、肌は所々切り傷があり、夜着も泥や草がついている。全く王子の婚約者らしくはないかもしれないが、朱栞の小さな意地でもあった。

 痛む体を堪えながら、よろよろと城の玄関まで戻り、歩いて部屋に戻ろうとした。
 

 「ラファエルっ!!」


 今度こそ彼の魔力の感じ、闇夜の空を見つめる。けれど、それがいつもより弱々しく感じるのだ。朱栞は一気に不安に襲われる。そして、気づいた。ゆっくりと近づいてくる彼は、リトに抱えられているのだ。


 「ラ、ラファエル……その傷は!?どうしたの!」


 朱栞の近くに舞い降りたラファエルは意識がないようだった。それに服はボロボロで肩には大きな傷もある。
 彼に駆け寄り、震える声で彼を呼ぶ。どうしてこんな大怪我をしているのだろうか。彼は大丈夫なのか。朱栞はゆっくりと彼に触れようとした。



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