囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。
「安心してください。ラファエル様は自分で飛んで帰ると聞かなかったので、私が魔法で無理矢理寝せただけですので」
「そ、そうだったの……。けれど、怪我が酷いわ………大丈夫……」
「これはあなたのせいで負った怪我ですよ。そんな心配など止めてください」
「ぇ………」
冷たく言い捨てるリトは、それ以上に凍りついた瞳で朱栞を見ていた。
彼を怒らせるような事態が、自分のせいで起こってしまったのだとすぐに察知した。
「それはどういう事ですか?私のせいで……どうして、ラファエルが………」
「愚かですね。本当にあなたは、自分の事しか考えていない。そして、王子の事を信じてなさらない。……婚約者として、私は相応しくない。改めて思いました」
「っ……それはなぜ………」
「契約妖精として王子と契約を結んだのに、何故王子にその力を使わせない約束をしたのですか?危険はいつ起こるかわからない。あなたの必要価値はハーフフェアリの莫大な力だ。それさえも、彼に使わせないで意味がないのではないですか?………あの時、あなたの魔法を使っていれば、ラファエル様は怪我を負わなくてすんだのです。あなたとの愚かな約束を、ラファエル様は守り怪我をした。……その事実を、胸に刻んでください」
とても冷静な言葉だった。
そして、朱栞にとって重く、胸が傷つく言葉でもあった。けれど、リトが話している事はすべて正論であった。それゆえに、朱栞はショックのあまり、その場から動けなくなった。
ラファエルを抱えて城に入っていくリト。そして、そこから見える力なく垂れるラファエルの揺れる腕を、朱栞は見つめていたが途中からそれさえも出来ずにその場から逃げたのだった。