囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。
朱栞が鏡に更に近づいた。
すると、その歪みから人の顔が浮かび上がったのだ。
強面で瞳は厳しく、声から想像した通りの男性だった。けれども、年齢は若い。肩まで伸びた少し白髪混じりダークブラウンの髪を後ろで縛ってる。そして、夜中だというのにその男は正装なのだ。そう、ラファエルが婚約式をした時より少し豪華だが同じような服。それを見て、朱栞はすぐに王族の人間だと理解した。
そして、深く頭を下げた。
「も、申し訳ございません。王族の方とは知らずこのような服装で御前に立ってしまい……」
「よい。こんな夜中に読んだ私が悪いのだ。顔をあげろ」
「はい……。初めて御目にかかります。私は異世界の日本という国から参りました。シュリ・シガと申します。ラファエル様に助けられ、この城へ住まわせていただいております」
「私はこのシャレブレ国国王アソルロだ。異世界人であり、ハーフフェアリ、シュリよ。よくこの世界に来てくれた。歓迎する」
シャレブレ国現国王であるアソルロ。
まさか、国王が目の前に現れると思ってはおらず、朱栞は驚き目眩を覚えた。
先にしっかりと挨拶をしておいた自分を褒めながら、朱栞は必死に作り笑みを浮かべ、国王の顔を見つめる。
国王自ら朱栞に会いたかった理由は何故か、頭のなかで考えてみたが全く検討もつかなかった。それとも昨日の朱栞の身勝手な約束について、もう知っているのだろうか。
朱栞は国王の次の言葉を、恐れながら待つのがとても長く感じた。