囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。
29話「妖精、キスをする」
29話「妖精、キスをする」
「婚約のお祝いがまだだったな。ラファエルとの婚約を認めてもらったのはこちらも嬉しい。感謝する」
「いえ……こちらこそ光栄でございます。ラファエル様の婚約者として恥じないよう過ごしていきたいと思っております」
「それにしても………シュリ、おまえはやはり魔力が高いな。この通信魔法は高い魔力が必要となる。こちらだけでは、こうやって話することは叶わないのだ」
「そうですが。魔力の力でこうやってアソルロ様とお話しできる事、嬉しく思います」
「そうかしこまらなくていい。今回は、君の知り合いだと言う異世界人の話しを聞きたい。私たちも手を焼いているんだ」
思いもよらない話しに、朱栞は驚いた。
この国で朱栞の知っている異世界人というのは、彼しかいない。穂純だ。
朱栞は焦る気持ちを抑えて、口をあけた。
「それは、穂純という男性の事でしょうか?」
「あぁ。そして、こちらでは名をセクーナと名乗っているらしい」
「セクーナ……」
初めて聞いた、彼の別の名前。朱栞は頭の中で反芻する。だが、ラファエルが探していると言っていた穂純の情報を国王が何故知っているのか。朱栞は不思議に思った。
それに先程国王が口にしていた「手を焼いている」というのは、どういう事なのか。朱栞は疑問だらけだった。
その表情が鏡の中の国王にも伝わったのだろう。彼も意外そうな表情を見せた。