囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。
朱栞は、自分の手足や体を見渡した後、視界の端に羽がふわふわと浮いているのに気づきハッとする。そうだ。自分は妖精に転生してしまったのだ。まだ数時間とはいえ、違和感しかない。
「君の名前を聞いていなかった。君の名前は?」
「朱栞、です。」
「シュリ。改めまして、初めましてだね。俺はシャレブレ国第6王子、ラファエルだ」
「お、王子、様?」
目の前の巨人は自己紹介をした後に、片手を胸に置き、反対の手は後ろにまわしながら頭を下げた。その動作は洗練されており、手の動きや頭の下げ方まで美しかった。やうやうしく挨拶をするラファエルは、さすがは王子様だなと思わせる、ため息がでるほどの美しさだった。
挨拶1つでそれを感じさせる彼。もちろん、容姿や身なりも王子らしいが。
けれど、顔を上げるとそこには満面の笑みがあり、彼は少年のように笑っていた。
「王子は王子でも第6王子だから、そこまで偉くないから気にしないで欲しい。それに、俺よりも君の方がこの世界にとっては貴重で大切になれるべき存在なんだ」
「貴重…………。妖精が?」
シャレブレ国は妖精の国だと言われている。
草原で出会った時、ラファエルの近くにも、金髪の妖精が飛び回っていたはずだ。それなのに、朱栞が妖精に転生したとしても貴重ではないように思えた。
朱栞が不思議そうに彼の事を見つめると、ラファエルは「疑問でいっぱいって感じの顔だね」とクスクスと笑った。
「それはあと少しでわかるよ」
「え…………」
「お腹が空いただろう。簡単な食べ物と飲み物を準備した」