囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。




 「じゃあ、昼間のキスはシュリからで、夜は俺からキスにしようか。うん、いい考えだ!」
 「わ、私からキス……。それは無理だよ」
 「何で無理なの?さっきしてくれたのに?」
 「だって……恥ずかしいじゃない」


 何で、今は朝なのだろうか。今ばかりは、明るい太陽の光を恨んでしまう。妖精の姿ではなかったら、今すぐに抱きだきしめて、キスをして、ベットの中に引きずり込んでしまっていただろうな、とラファエルは思った。


 「…今すぐに魔法で夜にするか」
 「え!?そんな事できなるの?」
 「冗談だよ。出来たとしても、みんなが困ってしまうだろうからね。大人しく、夜まで待つとするよ」


 ラファエルはそういうと、朱栞が居る枕元にまた頭をつけて横になった。


 「大丈夫?傷が痛むの?」
 「いや、昨日はあまり寝れなかった。うとうとはするんだけれど、ね。君がいないと寝れない体になったみたいだ。だから、今隣にシュリが居て急に眠くなった」
 「傷を癒すためには寝るのが1番よ。だから、ゆっくり休んで。ラファエルが寝るまでここにいるわ」
 「寝ている間は?」
 「じゃ、ここで作業をする。けど、タイプライターの音は結構うるさいわよ」
 「俺にとっては子守唄になるだろうな」
 「わかった。……おやすみ、ラファエル」
 「おやすみ。君がここに居てくれて俺は嬉しいよ」


 ラファエルなニッコリと微笑むと、朱栞の前に手を置いた。すると、彼女は意味がわかったのか、その手に小さな手を重ねてくれる。

 その瞬間にラファエルはウトウトし始めてしまった。昨晩寝れなかったのは本当だ。もしかしたら、寝ていたのかもそれないが、それでも何度も起きたような気がしたし、穂純の事を寝ながらも考えてしまっていた。だから、今ごろに眠くなったのだろう。
 けれど、先程まではすぐに起きて報告などを済ませなければいけないと思っていた。それなのに、シュリと話し、彼女の体温を感じただけで、体は動かなくなってしまった。彼女に甘えているのだろう。
 ラファエルは、口元が緩むのをもう誤魔化せなかった。

 きっと、熟睡できる。
 体力も魔力も戻って、完璧な状態になってから、また臨もう。
 そう思い、ラファエルは目を閉じた。


 だが、この甘えをラファエルは後悔することになると、この時は思いもしかったのだった。







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