囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。
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ラファエルはあっという間に寝てしまった。
繋がった手からは、ゆっくりとした呼吸が伝わってくる。やはり、怪我のせいで彼は体を休めなければいけないのだろう。怪我の具合はまだ安心はできないけれど、穏やかな寝顔を見るとホッと出来た。
ラファエルとの時間は、朱栞に安らぎを与えてくれる。そして、彼ともっと共に居たいと思わせてくれる。
だから、彼が帰ってこない時間や怪我をして倒れた時、朱栞は怖くなった。そして、彼といることが何よりの幸せだとわかった。そして、ラファエルへの気持ちも。
自分からキスをしてしまったのは、今となってみれば大胆な事だったかもしれない。
けれど、その時はそうしたいと思った。それが素直な気持ちなのだろう。
朱栞は、そっと自分の唇に触れる。もし今が夜であったなら、彼と本当のキスをしていたのだろう。そう思うと一気に心臓の音が騒がしくなる。
ラファエルの事が好きだと気付いてしまえば、愛しさは増すばかりだ。
恋というのは、気づいた瞬間から大きくなるのだなと改めて感じていた。
ラファエルは、寝ている間も傍に居て欲しいと願っていた。
朱栞も、彼と同じ気持ちだった。せっかく思いを伝えられて、両想いという関係になれたのだから、ラファエルから片時も離れたくなかった。
「ラファエル、ごめんなさい。やっぱり、私にはやることがあるの……」
朱栞はそう言うと、彼を起こさないようにゆっくりと手を離した。