囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。
ラファエルは起きた時に穂純の事を話してくれるだろう。
けれど、きっと穂純の元へは連れて行ってはくれないだろう。ラファエルを攻撃してきたぐらい危険な相手だと判断されるはずだ。そんなところにハーフフェアリという貴重だと言われる朱栞が行けるはずがなかった。
それは朱栞にもよくわかっている。
けれど、朱栞は穂純と会わなければいけない。そう思っていた。
自分がラファエルと共にこのシャレブレ国で生きると決めて、全てがおしまいではないのだ。
朱栞にとって穂純は元の世界では大切な存在だった。それが、異世界に来たからといって変わるものでもない。確かに好きな相手が変わったかもしれないが、だからといって、彼という人間をすぐに嫌いになれるはずもない。
ラファエルや国王の話を信じないわけでもないが、直接会って話がしたかった。
もし本当に妖精の密売に手を染めているならば、理由を聞きたかった。そして、そこから手を引いて罪を償ってほしかった。そう説得したかったのだ。
元の世界の事は記憶がないらしいが、朱栞と出会う事で、もしかしたら思い出してくれるかもしれない。それならば、きっとやめてくれるはずだ。朱栞はそう信じていた。
「すぐに戻ってくるから。あなたが目が覚めるころには、ね」
ラファエルに微笑みかけて、小さな声でそう伝える。
彼には心配をかけない。いざとなれば、ハーフフェアリである巨大な魔力があるのだから。
朱栞は、ラファエルの部屋の窓から、城を抜け出し、こっそりと昨日の爆発音と魔力を感じた場所に向けて出発したのだった。