囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。



 「ホープ。まだみんなには内緒なのだけど、私はこの人魚姫や他の異世界の物語を精人語に訳して本にするつもりなの」
 「訳して……?」
 「異世界の言葉ではなく、こちらの文字で本を書くという事よ。今も作業中なんだけど、完成したら本にするつもりなの」
 「わぁ……すごい!それはとても良いことだと思いますっ!!」


 ホープはキラキラとした笑みでこちらを見ている。
 希望に満ちた瞳。きっと朱栞がラファエルに本を作りたいと話した時もこうだったのだろうな、と少し恥ずかしくなる。だが、今から本を楽しみにしてくれる人がいる。それを思うと、断然作業にも力が入る。
 それに、朱栞はホープの絵を見て、また新たな考えが浮かんだのだ。それは、自分でもかなり良い案だと自信がもてるものだった。けれど、それを決めるのは朱栞ではなくホープだ。


 「ねぇ、ホープ。その本を作るのに力を貸してかしてくれないかしら?」
 「僕が、ですか?僕でお役に立てるのなら頑張りますが。僕は絵を描くことしか……」
 「絵を描ける事が素晴らしいのよ。こんな綺麗な絵を描ける人はなかなかいないわ。だからね、私が作る本の表紙や挿絵を描いて欲しいの。この人魚姫のように」
 「え……僕が、本に絵を?」
 「えぇ、そうよ。私はあなたの絵に感動したの。あなたが私が伝えた異世界の物語に感動したように、ね。だから、私と一緒に本を作らない?もちろん、報酬は支払うわ。と、言っても私はお金を持っていないから、ラファエルと要相談になるけれど……」
 「シュリ様、ぜひその依頼受けさせてください。僕の絵が本に載るなんて夢のようです。嬉しいです」



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