囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。



 そう言って彼が扉に向かって手の甲を向けた。そて、人差し指で合図をするとゆっくりと扉が開いた。魔法なのだろう。朱栞は茫然としながらそちらを見る。すると待機していたのだろう、茶色のワンピースを着た女性が銀色のワゴンを押して部屋に入ってきた。ワゴンの上にはティーポットや皿の上に料理が乗っていた。その女性はメイドなのだろう。ラファエルの小さく頭を下げた。


 「ラファエル様、お料理をお持ち致しました」
 「あぁ、ありがとう。あとは自分で準備するから君は下がっていいよ」
 「え、ですが………」
 「2人きりで話したいんだ」
 「………かしこまりました」


 少し戸惑っている様子だったが、王子であるラファエルに頼まれてしまっては退室するしかやるべき事は残っていないのだろう。メイドは、来た時と同じように頭を下げた。そして、去り際にチラリとシ朱栞の方に視線を向けた。何か汚いものを見るような軽蔑した冷たい目線を向けていたのに気づく。朱栞はドキッとした。この人はいい思いで自分を見ていない。そう察知した。そういう時の勘は正しい。けれど、どうして毛嫌いされるのか。それを理解できるほど、朱栞はこの国について、自分の存在について何も知らないのだ。
 シャレブレ国に来てしまったのならば、ここで暮らしていく事になるのだ。その為に、知らなければならない。生き抜く方法を。


 「シャレブレ国のお茶はおいしい。甘味があって花の香りが高いのが特徴なんだよ。それと、トリの肉と野菜にパンを挟んだものと、焼き菓子があるね」


 妖精のための小さなカップと皿もある。そこにお茶を淹れると赤茶色の液体がカップに流れ落ちる。紅茶のようだな、と朱栞は思った。それと同時にフルーティーな香りが部屋に漂ってくる。トレイにカップと料理を小さくカットしたものが並んだ皿を乗せると、ベットの上に置いた。


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