囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。
「実は昨晩、シュリ様が地下室から出てくるのを見たメイドがいました。とても深刻そうな表情をしておられたそうで。そのメイドは、シュリ様を慕っている方でしたので大丈夫ですが、他の城の者に知れたら不審がられるのではないかと不安でして」
「シュリが地下室から?あそこは、特定の者しか入れないはずだが。守衛もいなかったのか?」
「それが、何故かシュリ様が出ていらっしゃた時はお1人だったそうです」
「なるほど……」
あの地下室には、秘匿な物や情報がたくさんある。必ず腕の立つ者を守衛に置いていた。それに魔法でも侵入を拒むようにしていたはずだ。確かにシュリの魔力であればどちらも突破できるはずだが、そうなれば守衛は気づくはずであるし、魔法が破られた形跡が残るはずだった。
だが、どちらもない。となると、考えられるのはこれも1つ。
「国王か…。余計な事を言ったか………」
ラファエルは低い声でそうつぶやくと、すぐに朱栞の部屋を出た。
「ラファエル様。シュリ様は、シュリ様は大丈夫なのですか?」
「俺が必ず連れ戻す。シュリはきっと空腹だろう。彼女の好物を準備して待っていてくれないか」
「はい。かしこまりました。ラファエル様、どうか、宜しくお願い致します」