囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。




 「このシャレブレは最高だよ。本当に純粋でお気楽な奴らが多くて面白いんだ。犯罪も少ないから人を信じるんだよ。疑うことをしらない。だから、捕まった時の裏切られたと分かった時の表情がまた傑作なんだ。人間も妖精もバカばっかりだ」
 「………やめてください」
 「妖精のコレクターも少しずつ増えてきてな。目の色が違うものや、綺麗な髪、美しい容姿、そして体が大きいものはすぐに売れる。売れた妖精も幸せだろうな。可愛がられて、綺麗にされて、食事も出てくる。まぁ、ずっと檻の中で自由には飛べないだろうが、それもいい人生なのかもしれなだろう?」
 「もう、やめてっ!そんな話聞きたくないっ!」


 気づくと、朱栞は檻の中で大きな声を上げていた。叫び声にも似た声に、穂純も少し驚いた様子だった。けれど、それも一瞬ですぐに笑みに変わる。


 「穂純さん。私は、ずっとあなたの事を好きでした。それは事実です。ですが、そんな話を聞いてまであなたを好きでいられずはずがないです。今の私には他の好きな人がいます。けれど、穂純さんはずっと憧れで大切な人だって思ってました。思っていたかったです。けれど、妖精たちを傷つけるならば、私は絶対にあなたを許さない。罪は償ってもらいます」
 「そういう所だよ、おまえのつまらないところは」
 「くっ!!」



 檻の柵の間から、穂純の手が入ってくる、咄嗟によけようとしたが体が動かない。それが、穂純の契約妖精の魔法の力だとすぐにわかった。穂純は朱栞の髪を乱雑につかむと、そのまま強引に引っ張り朱栞の顔に自分の顔を寄せた。

 「黙っていれば綺麗な顔をしているんだ。そんな暴言は吐くなよ」
 「汚い言葉と顔を近づけないでください!」
 「このっあまがっ!」
 「っっ!!」


 彼の拳が朱栞の頬を激しく打った。
 朱栞の体は檻の反対側まで飛び、柵に強く背中を打ち、そのまま床に体が倒れ込んだ。
 この檻の中はただでさえ力が出ないのに、痛めつけられてしまうと、体が思うように動かない。朱栞は地面を必死に爪を立てて動こうとするが、腕も足も動かない。


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