囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。
「それ以上近づいたらこいつを殺す」
「何を言っているんだ。それは俺のセリフだ。これ以上彼女に触れたらお前を殺してしまうよ、セクーナ」
口調は優しいのに重く冷たい声。
穂純が息を飲むのが伝わってきた。ラファエルが魔法を解いたのだろうか、彼の魔力が一気にあふれてくる。今までに感じた事もない魔力に、敵意を向けられていない朱栞でさえ恐れを感じてしまう。
「シュリ。少し目を瞑っていて。君には見せられない」
「ラファエル、待って……!」
「ダメだよ。君の大切な人かもしれないが、君を傷つけたことを俺は許せない」
「ラファエルが人を傷つけちゃダメ……」
「シュリ………」
ラファエルはきっと穂純を傷つけようとしている。
それは朱栞のためだとわかる。けれど、助けるためといえ、人を傷つけたら、傷つけた人間もきっと傷つくのだろう。そう思うと、朱栞は心が痛んだ。
それに穂純も助けたかった。
自分に酷い事をした、ラファエルに酷い事をした。それでも、傷ついて欲しくない。自分のやってきた行いを罪だと認めて欲しい。
そう思ってしまうのだ。
「だから、お前は甘いんだ」
ラファエルと朱栞のやり取りをただ聞いていた穂純だったが、隙をついて朱栞の事を後ろに投げ飛ばした。そして、いつの間にか穂純の傍に姿を現していたランが、ラファエルに向けて魔法を放っていた。
「前と同じ攻撃が効くと思うか?」
ラファエルはその直前に光のシールドを張り、それを避けた。穂純は舌打ちをして持っていたナイフを投げるが、ラファエルはそれもよんでいたのか、魔法でそれを床に叩き落とした。
「シュリ。君の魔法を借りるよ」
「ダメ!今は使わないで……」
「意外と魔力が強い妖精を使っていてね。そうじゃないと勝てないんだ」
「へー、俺の事そんな風に評価してくれるんだ。嬉しいな」
「おまえの事を褒めているんじゃない。妖精を褒めているんだ」
「っ!!バカにするなよっ!」