囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。




 ラファエルと穂純は魔法で加速しながら、武器で戦っている。目では追えない早さで動いている。けれど、穂純はそれに追い付くのに必死のようだった。ラファエルの方が優位だ。だが、ランの動きがすさまじく、彼女はアレイを相手にしながらも、穂純をサポートしているのだ。こちらは、アレイが劣勢だろう。

 そんな彼女らを見て、朱栞はハッとした。
 どうして、私は夜だけ魔法が使えないのだろうか。ハーフフェアリだとしても、体には妖精の血が巡っているはずだ。それなのに、夜だけつかないというのはおかしいのではないか。目の前の彼女たちは使えているのに。


 「………やってみるしかない……」


 朱栞は起き上がる事に力を使うのではなく、魔力を溜める事に力を集中した。
 少しでもいい。体に魔力を溜め込んでいくのだ。体の中にある血を感じるのだ。

 すると、少しずつ魔力が溜まっていくのがわかる。やはり、夜でも魔法は使える。
 朱栞はまず先に近くの檻と鎖を壊した。朱栞が手を伸ばしただけで、それが消滅したのだ。


 「ぇ………」

 予想以上の力に、朱栞は驚きながらも次は自分の体力を回復させた。けれど、これもあっという間だった。立ち上がる事も出来ないぐらいだったが、今ではすんなりと立ち上がれた。
 いや、宙に浮いていた。


 「シュリ……君は……」
 「なっ……ハーフフェアリは夜、魔法は使えないんじゃ」
 「穂純さん……私はあなたが好きでした。好きで、まだあなたを信じたい。……だから、私があなたを捕まえます!」


 朱栞の背中には、昼間の姿のような綺麗な羽がついていた。それを開き、朱栞は穂純に手を向ける。それと同時に、朱栞の羽が一斉に彼に向けて勢いおく飛び出し、穂純を包んだのだった。


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