囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。
36話「妖精、力を取り戻す」
36話「妖精、力を取り戻す」
朱栞が目覚めた時には全てが終わっていた。
「あれ、ここは城……?」
「あぁ、シュリ。目が覚めたんだね」
「ラファエル………あっ穂純さんはっ?!」
「君が捕まえたんだよ。魔法の力でね。覚えてないかい?」
「そういえば……、私、人間の姿なのに羽が生えて………」
寝起きの虚ろな記憶の中、やっとの事で気を失う前の事を思い出した。
妖精の密売に関わっていた穂純が、朱栞やラファエルを攻撃してきたのを止めるために、朱栞は魔法を使おうとしたのだ。本来、ハーフフェアリである朱栞は夜は人間の姿に戻るため、ほとんど魔法が使えなかった。そして、昨日は魔力を抑えこまれてしまう檻の中にいたのだ。魔法など使える状態ではなかったのだ。
だが、朱栞のラファエル達を守りたい。そして、穂純を捕まえたい。その一心で、体に力をため込んだ。そして、人間の姿のままで妖精へと覚醒したのだという。
「かなりの力を使ったのだろうね。君は羽で穂純やランを覆い、捕まえたんだ。あの羽はとても不思議だった。捕まった者の魔力を吸い取るようでね、2人は気絶してしまったんだ。牢屋に入っている」
朱栞は大分長い間寝てしまったのだろう。
今の状況はどうなっているのか。そして、疑問な事がありすぎる。朱栞は大人しく寝ていられるはずもなく、ベットから起き上がろうとした。
が、その時になってやっと気づいた。
ベットがやけに小さく、ベットの傍に座っていたラファエルも妙に近いのだ。
今は昼過ぎという時間帯のはず。ラファエルの部屋のベットで寝かされた朱栞の体は、昼なのに、なぜか妖精ではなく人間の姿だった。