囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。





   ★★★




 
 それは、ラファエルがまだ15歳にもならないうちに、警備隊に同行してある事件を追っている時だった。
 大きな組織として育ってしまって裏の商売。妖精の密売を行っている者たちの居場所をつきとめたのだ。そこへの潜入にラファエルも参加したのだ。王子は参加しなくてもいい、危険が伴うとリトには大反対されたが、ラファエルは「この領地で本当の姿を見ておくべきだ。それにこの部隊で最も力があるのは俺なのだから、赴くべきだ」と、提案し半ば無理やり参加する事になったのだ。


 そこで見た光景を、ラファエルは一生忘れる事はないだろう。いや、忘れてはいけないと思っている。
 小さな檻が何100個と並べられた倉庫のような大型の建物には、予想をはるかに超える妖精が捕まっていた。皆憔悴しており、もともと小さい体が更に細くなり痩せていた。鎖でつながれて魔法が使えない檻で、買い手がつくまで劣悪な環境で生きていたのだ。
 残念ながら檻の中で死んでいたものもいた。


 「なんて、むごい事をするのだろう」


 ラファエルは目を背けたくなる光景を、じっと見据えた。
 密売の組織は、かなり抵抗し警備隊へ攻撃をしてきた。が、国の精鋭隊が揃っているのだ。簡単に勝てるはずもなく、ラファエル達はあっという間に秘密の倉庫を占領した。次から次へと人間が捕まっていく。これで、妖精の密売も落ち着くだろう。警備隊の中で、安堵の雰囲気が漂ってきた時だった。



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