囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。
「………人間……ではない、妖精か………?」
美しい銀色の紙は背中まで伸び、白い体はほっそりとしていた。瞳は何色とも言えない虹色で、体は若い女性と同じようなものだった。けれど、背中からは天使のような白い羽がついていた。それは普通の妖精とは違う、鳥の羽のようなものがついた翼だった。
だが、大分弱っているようで、床に横になりピクリとも動かず目線だけでこちらを見ていた。
「また人間ですか。……私は軍人に売られて戦争の道具になるのですか?」
その妖精は気だるげにそう言った。
ラファエルは、あまり神秘的な存在に声を出せなくなっていた。
「私はどうなっても構いません。けれど、あの子に手を出したら。私はあなた達人間を滅亡させる事に最後の力を使うでしょう」
その妖精が目を運んだ先。
彼女の魔力で霞んでしまっていたが、近くに小さな檻がもう1つ乱雑に置かれていた。
そこには、この妖精とは違う、茶色の髪に白い肌の妖精がこちらを不安そうな瞳で見つめていた。小さな妖精は少しやつれてはいたが、怪我などはなく、扱いは他の者と違っていた。
こんな普通の妖精が、どうして大切にされているのか、この時ラファエルは知るはずもなかった。
そして、これが運命的な出会いになるとも。