囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。
ラファエルとカーネリアは、時間を見つけては2人で空を飛び散歩に出かけていた。
温かい風を受けながら、自然を五感で感じ、飛び回るのが同じ趣味であった。
そして、彼女がいつも遊びに行くところがあった。
海沿いにある、ラファエルの両親が住んでいる場所だ。王子でありラファエルの両親は、この領地をまとめる仕事にはついていなかった。彼の父親の妖精が持つ力は、異世界へと移動できる力だった。定期的に異世界から戻ってきており、今はシャレブレにいるのだ。
そして、両親から借りるものがあった。それは異世界の本だった。
「今日はおやゆび姫ですって。小さなお姫様の話なんだって。なんだか、私たち妖精みたいね。前に一寸法師という本もあったけれど、異世界ではこんなに小さな生き物は珍しいのね」
「そうだね。確かに妖精など小人と呼ばれる存在は、幽霊や妖怪の扱いに等しいかもしれない」
「ユウレイ?ヨウカイ?」
「人ならざぬ者って事だよ」
「じゃあ、きっと私が異世界に行ったら、驚かれちゃうのね。それはそれでも面白そうだわ」
クスクスと笑いながら、貸してもらった本に目を落とす。
2人は砂浜に座り、肩を寄せ合いながら、本を読む。彼女の優しい声で、読み上げられる物語。時々、「まぁ、素敵ね」「怖いわね」などと、彼女の感想が挟まるのも面白い。ラファエルは彼女の声でその物語を楽しむ時間が何よりも好きだった。
「ねぇ、ラファエル。……王子様はやっぱりお姫様と結婚するの?」