囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。



 異世界に行くとなると不安要素もある。
 まずは記憶の事だ。異世界に行くとなるとラファエルの両親やラファエルは何故か記憶の影響を受けなかった。だが、他の人々が転移するとなると高い確率で記憶を失ってしまうのだ。魔力が高ければ何とかなる場合もあるが、異世界では魔法は使えない。そのため、全く意味がないものなのだ。だが、記憶を残しておく方法が1つだけはある。それを行うしかないのだ。
 そして、1番の不安は彼女の傍にいれないことだ。シャレブレ国からの脅威はなくなるものの、異世界で生活していれば、他の不安もある。病気、事件、怪我、そして妙な男がカーネリアに寄り付かないかも心配だった。ラファエルも異世界に行きたかったが、王子として領地を離れるわけにはいかないのだ。彼女を守れなくなる。それが心配で仕方がなかった。


 「どうして……?何で、異世界に行かなきゃいけないの?怖いよ……」


 カーネリアには黙って異世界に転移させた方が悲しませずに済んだのかもしれない。記憶をなくしてしまうのだから、そうすれば異世界を謳歌できたのかもしれない。
 けれど、ラファエルはカーネリアに嘘などつけるわけはなかった。
 彼女に正直に話しをすると、カーネリアは案の定不安な表情になり、ラファエルに問い詰めた。

 「カーネリアの安全のためだ。時々、会いに行くよ」
 「時々でしょ?今みたいにずっと一緒じゃないなら行きたくない」 
 「国王からの命令だ。それに背くことは出来ないよ」
 「守ってくれるって約束したじゃない……!」
 「俺だって君の傍を離れたくない。けど、この間だってカーネリアを誘拐しようとした奴がいただろう」
 「でもラファエルがいたから助けてくれた!それじゃダメなの?」


 つい先日もカーネリアは魔力目当ての人間に襲われた。
 だが、それをラファエルが助け、何事もなく終わった。だが、それはラファエルが傍にいたからだ。ラファエルがずっと一緒にいれるわけもないのだ。
< 172 / 181 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop