囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。
☆☆☆
「………怒ったか?」
「怒った!!すっごい怒ってる。そんな大事な事、どうして早くに教えてくれなかったの?」
朱栞は、話しを聞きながら大きな涙を沢山流していた。
まだ記憶は戻っていないが、どこか懐かしくて、その話をすんなりと受け入れる事が出来た。体の1部分が少しずつ取り戻されていくような感覚だ。
「本当はまだ君をシャレブレに戻す予定ではなかったんだ。まだ、妖精の密売組織を完璧壊滅できてなかったからね」
「じゃあ、どうして、私を?」
「俺が我慢できなかったっていうのもあるけど。1つは穂純だ。君を連れて来て魔力をあげたかった。彼の魔力は強かったからね。国王にお願いしたんだ」
「だから、私と契約を結んだのね。じゃあ、婚約は……」
「国王が、密売組織を壊滅できなければ婚約を認めないと言われていてね。仕方がなく、だよ。記憶を一気に戻せば、君の体が心配だった。ただでさ、久しぶりにこの世界に戻ってきて慣れない魔力を一気に戻したんだ。記憶はゆっくり戻そうと思ったんだよ」
そう言って、ラファエルは朱栞の頭を撫でた。
昔の話をし終わったからだろうか、彼の距離がいつも以上に近い。朱栞は話を聞いたにしろ記憶は戻っていないので、少し恥ずかしくなってしまう。昔から両想いだったなんて、信じられなかった。