囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。



 そう言うとラファエルは、今度はキスの雨を降らした。
 カーネリアはそれに翻弄されながらも、彼が与える甘い口づけに酔いしれる。
 愛しい相手からのキスは、どうしてこう気持ちよく、幸福感で満たされるのだろうか。気づくと、カーネリアは自分から求めるように彼の頭に手を伸ばしていた。そんなカーネリアを見て、彼は満足したのか笑みを浮かべながら、さらに深い口づけを続けた。


 「カーネリア。やっと、そう呼ぶのにも慣れてきた」
 「うん。私も呼ばれるのに慣れてきたよ。でも、やっぱりこの名前の方が不思議と馴染むの。きっと昔からラファエルのそうやって呼ばれていたからだよね」
 「あぁ。これからもずっと呼ぶ。だから、カーネリアも、俺の名前を呼んで……」
 「ラファエル……」
 「うん」
 「大好きよ、ラファエル」
 「俺も、好きだ。誰よりも君が、ずっと昔から愛している」


 少し潤んだ瞳同士を見つめ合い、どちらともなく顔を近づけて、何度目になるかわからないキスを交わす。

 きっと、これからの未来、こうやって何度となく名前を呼び合い、愛し合うのだろう。
 そんな幸せな日々を思い描いては、笑みがこぼれる。

 シャレブレという故郷で、彼とずっと生きていこう。
 物語の王子様とお姫様のように、「いつまでも幸せに暮らしました」と、言えるように。



                                (おしまい)


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