囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。
★★★
彼女の部屋から出て、待機していたシュリ専用の使用人にした女を呼んだ。
「もう少し時間が経ったら彼女を風呂に連れていってくれ」
「かしこまりました………。あのラファエル様、1つよろしいでしょうか?」
「あぁ」
その女は茶色のワンピースをギュッと握りしめシワを作りながら、王子であるラファエルに言葉をかけた。
「どうして、あのような方に目をかけてあげるのですか?本来ならば、そこまでするような身分ではないかと……」
主であり、王子でもあるラファエルに意見をしているのだ。そのメイドはおどおどした表情になっていた。それもそのはずだ。王族の人間の機嫌を損ねるような事を言えば、自分の立場が危うくなってしまう事もあるからだ。
でも、それほどの危険を知っていても彼女は伝えたかったのだろう。
シュリがこの国では、怪訝される存在であることを。そして、そんな彼女が一国の王子であるラファエルが保護したとなれば問題視されるはずだと忠告したかったのだろう。
彼女は自分を心配しているのだとはわかったが、それは必要のないことだ。