囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。
そう言って、ラファエルは朱栞の部屋に入ってくる。驚きながらもとても嬉しそうに笑っている。そして、朱栞に近づくと昨日と同じように、目の前に手を差し出す。朱栞は、少し考えた後にその手に乗ると、朱栞を自分の顔の前に持っていったラファエルは「おはよう、シュリ」と、片方の手の人差し指で朱栞の頭を撫でてくれた。巨人の指に撫でられるなど不思議な体験だ。けれど、不思議と怖いとは思わなかった。
「この世界の妖精は生まれてから1か月はうまく飛べないと言われているんだ。1日で羽を自分で動かせるなんて、すごいよ」
「……妖精なら飛べるのかなって思って」
「飛べるようになるよ。きっと、妖精よりも早く飛べるようになるだろうね。やはり、ハーフフェアリは他とは違う力を持っているのかもしれない」
真剣な眼差しで朱栞を、そしてその後ろの羽を見つめるラファエル。
そんな彼の口から出た言葉は朱栞にとっては聞きなれないものだった。
「ハーフフェアリ、ですか?」
「あぁ。名前の通り、半分は妖精。そして、もう半分は人間。君は人間と妖精の間に生まれた子どもなんだ」
「人間と妖精のハーフ...」
「そう。そして、シャレブレ国ではハーフシルフは前例のない事なんだ。君は、唯一の存在だ」
その話は、異世界を知るための長い話の、ほんの少しでしかない。
けれど、1番重要な事だっとのだと、その時の朱栞は知る余地もなかった。