囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。
6話「妖精、過去を知る」
6話「妖精、過去を知る」
ハーフフェアリ。
自分がそれと言われても、それが良いものなのか悪いものなのかも全くわからない。
ただ、「そうなのか」と思うだけだった。
キョトンとした表情のまま、真剣に見つめるラファエルを見ると、彼は少し困った顔を見せた。
彼にとって、自分はどんな存在なのだろうか。貴重な存在だというが、歓迎すべき者なのか厄介者者なのか。彼の表情を見ても、それはわからない。
「今日は1日時間を取った。朝食の後に話をしよう」
「よろしくお願いします」
朱栞が緊張しながらそう言うと、ラファエルはニッコリといつもと同じ笑みを返してくれた。
その後は、(かなり小さいサイズだったが)豪華な食事をいただいた。この日は、朱栞の居た部屋でラファエルも一緒に食べてくる事になった。その間、「これはシャレブレ国でよく採れる野菜で……」「元と国と同じような食べ物もあるよね」と、とりとめもない話しして過ごした。重要な事は、後々に説明したいのだろうな、と朱栞は思い、その楽しい時間を味わう事にした。シャレブレ国の食事は、少しスパイスが効いたものがあるが、味は元の世界と少し似ているような気がした。そして、塩や砂糖などの調味料は名前も味も同じだとラファエルに聞いてわかった事だった。
朝食後。
朱栞はラファエルに用意してもらった洋服に着替えた。「シュリのために昨日、街の店から何着か買ってきたんだ」と、メイド達の手によって洋服が運び込まれた。もちろん、人間用と妖精用、どちらも揃っている。そして、部屋にある豪華な扉を開けた先にあるクローゼットのような収納場所に並べられたのだ。けれど、妖精用のものはベットの上にずらりと並べられた。クローゼットからは小さな朱栞では取れないからだ。
彼には、「好きなものを選んで着て欲しい」と言われたけれど、どれもお姫様が着るようなドレスばかりで、朱栞は躊躇してしまった。けれど、夜着のまま過ごすわけにはいかない。一番シンプルな水色のワンピースを着た朱栞だが、問題が起こった。羽の部分がどうやっても上手く切れないのだ。穴は空いているものの、どうやって着れば良いのかわからないのだ。仕方がないので、背中が露出しているドレスを選び直して、やっとの事で渡されていたベルを鳴らした。ラファエルの部屋の外で待機していてくれてので、着替えが終わった合図として、ベルを鳴らすことにしたのだ。