囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。
「失礼するよ」
「お、お待たせしました………」
ベルが部屋に響き渡ると、ゆっくりと扉が開き、彼が部屋に戻ってくる。ラファエルの反応が心配で、朱栞はドキドキしてしまう。
「待っていたよ。………とっても似合っている。けれど、君がそのドレスを選ぶなんて思わなかった。いや、そういう大人っぽいドレスも素敵だけれどね」
「ち、違うんです!羽があって上手く着れなかっただけで……」
意外そうに肌の露出が多い選んだドレスを見つめるラファエルの視線を受けて、朱栞は必死に理由を説明すると、彼は納得したようにゆっくりと頷いた。
「そうだね。ごめんね、配慮が足りなかった」
「いえ……」
「話をして、君に魔法も伝えなきゃね。じゃあ、場所を移動しよう」
「え……」
「大丈夫。城内にある書簡室に行くだよ。さぁ、おいで」
ラファエルはそういうと、いつものように朱栞の目の前に彼の手がある。やはり彼の手は細いがゴツゴツとしており、所々に豆も出来ている。王子らしからに手だなと思ってしまう。
まだ転移してきたばかりだというのに、すっかり彼の手の上に乗り移動するのに慣れてしまった朱栞は素直に彼の好意に甘える。
そして、朱栞は彼に連れられて書簡室という場所に向かったのだった。
書簡が保管されている場所というと、暗い地下なのかと思ったが、それは全くもって違っていた。大きな窓から、太陽の光りが射し込む穏やかな雰囲気に包まれた部屋だった。
部屋と言っても、学校の図書室よりも遥かに大きな作りになっており、木製の本棚がずらりと並んでいた。壁に添って置いてある本棚は天井まであり、どうやって取るのだろうか、と不思議に思ったが、その疑問はすぐに解決した。時々、本がバサバサと鳥のように表紙を動かしながら宙を飛んでいたのだ。
まだ見慣れぬ魔法の本を目で追いながら、彼の歩く揺れに身を任せるしかなかった。
書簡室を管理している者に何冊か本を頼んだラファエルは、窓際に置いてあるテーブルに朱栞を下ろし、その向かえの椅子に座った。