囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。




 「さて。やっとシュリとゆっくり話が出来るね。待たせるばかりで不安にさせて申し訳なかった。この国の事もシャレブレの事も、そしてハーフフェアリの事も教えていくよ」
 「よ、よろしくお願いします」


 緊張してしまい、体が硬くなる。そんな朱栞を安心させようと、ラファエルはニッコリと微笑みかけながら話を進めてくれる。


 「うん。まずは、君が居た世界と、この世界について。これは仮説なんだけれど、お互いに異世界だという事はわかっているはずだよね。けれど、昔はこの2つの世界は同じだった。僕たちの世界ではそう考えられている」
 「同じ、世界?」
 「昔はきっと同じ過去を歩んできたんだ。けれど、進む道が変わった。その分岐点から、世界がわかれてしまった」
 「………分岐点では、何か事件や災害などがあったのですか?」


 きっと世界を揺るがす大きな物事があったのだろう。
 昔から、異世界があると言われていた朱栞たちにとって、その理由は特に驚くべき事ではなかった。けれど、それが何故なのかはわからない。
 朱栞が質問をすると、ラファエルの顔が苦し気に見え始めた。話しにくい事なのだろう。


 「大昔に妖精と人間が対立したんだ。自然破壊が進んだからだろうね。妖精は自然を守りたかった。人間達は文明の繁栄を願った。そこに大きな溝が出来てしまったんだ。それで、妖精は人間を力で攻撃しようとしたんだ。俺たちがいるこの世界は、文明の繁栄を最小限にし、自然と共に生き、妖精を受け入れる事に決めた。そして、君が居た元の世界では……」
 「も、もしかして…」
 「あぁ……。妖精と全面戦争し、人間が勝利し妖精を滅ぼした」
 「そ、そんな……」



 彼の話した内容があまりに現実的ではなく、そして残酷なものであり、朱栞は絶句するしかなかった。ラファエルは仮説の1つだと話してくれたが、きっと朱栞に話すほどの信憑性の高さなのだろう。
 過去の世界で何があり、どんな理由で妖精を滅ぼしたのかはわからない。
 けれど、それはとても残酷な行いであるという事は、今の世界に生きる朱栞であっても理解できることだ。



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