囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。
7話「妖精、疑う」



   7話「妖精、疑う」


 「ど、どういう事ですか?」
 「あぁ、やはりビックリさせてしまったかな。バレないように、ラファエルとしか名乗っていなかったからね」
 「そういう事ではなくて……どうしてラファエルさんのご両親が、元の世界にいらっしゃるんですか?まさか、私と同じようにこの世界からも転移している人がいるんじゃ」
 「それはないよ。転移できるのは、俺の両親だけなんだ。そして、2人は人を転移させる魔法を唯一使える存在でもあるんだ」


 やっと話が出来て嬉しかったのか、ニコニコと上機嫌で話すラファエルだが、朱栞はまだそれについていけない。セリベーノ伯爵夫妻は元の世界でとてもお世話になっていた人であり、朱栞にとっては大好きな方々だ。その人が、異世界人でした、と今言われても信じられない。
 が、確かに彼の綺麗な整った容姿やほっそりとした指は夫人に似ているし、微笑むと少し目が垂れる優しい笑顔は伯爵に似ていた。そして何より、人と話す時の穏やかな眼差しと安心する笑みで話を聞いてくれるところも。
 そして、おっとりとした口調で話をしてくれていた。そんな伯爵夫妻が朱栞は好きだったのだ。もちろん、そこも似ている。いや、親子なのだから似たのだろう。


 「王子である父は、俺にこの領土を任せて任務をこなしているんだ。そのために、君の居た世界に滞在している。そして、2人はそこで朱栞に出会い、君を気に入ったんだ。時々帰ってきて、君の事を教えてくれたよ。とても可愛い子を見つけた、とね」
 「あ………」

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