囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。
「シュリはその人が大切な人、なのかな?」
「………そう、ですね……大切です」
「恋人だった?」
「それは………違いますけど」
朱栞が好きな人ではあるが、恋人ではない。一方通行の片想いだ。そこで嘘をついても自分が虚しくなるだけであるし、それこそ嘘をつく理由がない。と、その時は思っていた。
そう言うと、ラファエルは「よかった」と小さく息を吐き安心したように首を傾げながら微笑んだ。
「2つ目の契約を話す前に確認しておきたかったんだ。恋人だとしたら申し訳なかったからね。シュリの大切な人がどこにいるのか、私も手助けをしよう。きっと役に立てるはずだ」
「あ、ありがとうございます!異世界という知らない場所で一人探すのは難しそうだったので……嬉しいです」
王子であるラファエルの助けを借りられるのは大きな成果だ。転移してからまだ1日も経っていないのに、初めに会ったのが王子というのはが良かった。
朱栞はホクホクしながらラファエルを見つめ、そして深く頭を下げた。
「ありがとうございますっ!よろしくお願いします」
「いいんだ、俺も嬉しいよ。……それでは2つ目の契約も大丈夫だね」
「は………い?」
「僕と婚約して欲しい」
「へ……?」
このラファエルという男は、人を驚かす天才なのだろうか。
あまりに予想外の展開に、朱栞は気の抜けた声が出てしまった。それぐらいに、ラファエルの語った契約内容は理解しがたいものだった。
「結婚ではないから大々的にお披露目する必要はないけれど、報告はしなければいけないね。特に国王と領民にはね。あぁ、その時のドレスも新調しておこうか。白は本番までとっておかなければいけないから、薄ピンクとか黄緑色がいいかな。シャンパンゴールドとかもいいね」
「ちょ、ちょっと待ってください。話が見えません。どうして、私と婚約だなんて。ハーフフェアリは、かつてない存在なんですよね。そんな私と王子が婚約なんておかしいです。それに契約でそんな事って。どうして、私なんですか?」
「ハーフフェアリである前から、シュリを見ていたから。その時から、ずっと気になっていたから」
「どういう事、ですか?」