囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。
「そんな事は気にしなくていいんだ。俺は君と一緒に寝られて嬉しかったよ」
「それは、その、そうなんですか」
「でも、これからは一緒に寝れるね」
「え……」
「さっき話しただろう。話したい事があるって」
確かに彼はそう話していた。
いつにも増して上機嫌なラファエルだ。何かいいことがあったのだろうか。
もしかして、と思いつつも朱栞の願っている事は、「ラファエルと共に寝る」という結果にはどうやっても繋がらない。
朱栞は「何かあったのですか?」と質問するとラファエルは、ジッと朱栞に顔を見つめた後に、優しく人差し指でシュリの頭を撫でてくれた。
「婚約の報告が今夜に決まったんだ」
「え……」
「君は人間の姿になるのは夜だけだからね。日が沈んだ後に、城下町にある祈りの聖堂に人を集める事になっている。そこで報告と婚約の報告をみんなにするんだ」
「そんな急に……」
「ごめんね。国王に許可がおりたのが昨日なんだ。君と早くに婚約をしたかったから、城の者には昨夜から準備をしてもらっているんだ」
そう言うと、ラファエルは朱栞を窓際まで運び、城下町を見せた。
レンガの道が続き、赤色や茶色の屋根が重なる街並み。たくさんの木々も植えられており、緑を感じられる、元の世界では田舎町のような雰囲気だ。朱栞はまだ城の外には出た事がない。そのため、どんな雰囲気かわからないが、とても温かい街並みなのだろうな、といつも城から見下ろしていた。
「見てごらん。あの背の高い三角屋根の建物が祈りの聖堂だよ」