囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。
ラファエルが示した先には、白い建物が見える。他の暖色系の建物たちとは、全く違う真っ白の建物。そこが聖堂だという。
「シュリ……不安も多いと思う。けど、俺がシュリを守っていくし、君の居場所になりたいと思ってる。だかた、一緒に聖堂に来て欲しい。幸せな時間になる事を誓うよ」
「はい」
この時、ラファエルと同じような笑顔を見せる事が出来ていただろうか。
穂純を見つけるために結ぶ契約。それは重々承知して自分で決めた事。それでも、やはり婚約するとなると胸がざわつく。
異世界に来て、王子と婚約する。そんな物語はもしかしたら、幸せに見えるのかもしれない。けれど、自分には片思い中の人がいるのだ。気乗りしないのは仕方がないはずだ。それをきっとラファエルは気づいているだろう。それなのに、彼は優しくしてくれる。
ラファエルは悪い人ではないのだろう。優しいし、朱栞の事をいつも中心に考えてくれているのがわかる。けれど、彼は心の奥底では何を考えているのかわからないのだ。それが少しだけ怖い。
「最近は婚約準備のために、シュリとの時間が取れなくて、君をメイナに取られていたからね。今日からは俺との時間をたくさんくれるよね?」
「そ、それは、もちろん。ラファエルさんに教えてもらいたい事もたくさんありますので」
「そうだね。けれど、君は本当に頑張っているよ。こんなにすぐ精人語を覚えたんだ。やはり、元の世界でもいろいろな言葉を学んでいたからこそだろうね。感心している。すごいな」
「あ、ありがとうございます」