囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。
そう言った後に拙い飛行でゆらゆらとテーブルへと移動した朱栞の後をメイナは不思議そう付いていく。テーブルの上には、昨日の夜、精人語で書いていた、元の世界の有名な物語、「シンデレラ」の原稿があった。まだ途中だったけれど、早く彼女に渡したかったのだ。
「シュリ様、こちらは……」
「これは、『人魚姫』と同じような元の世界の物語なの。『シンデレラ』っていうお話なんだけど、今回もお姫様のお話よ。まだ途中なんだけど、メイナに読んで欲しくて。あ、もし、精人語で間違えがあったら教えて欲しいな。その、勉強としてやったものだけど、メイナにも楽しんで欲しくて、それで……」
上手く気持ちを伝えられずにいると、メイナはその手紙を受け取ってくれた。
「シュリ様、ありがとうございます。とても、とても嬉しいです。私のような使いの者にまでお優しくしていただけるなんて……」
「メイナ……」
「シュリ様、申し訳ございませんでした」
「え………」
突然、謝罪の言葉を述べて謝り始めるメイナに、朱栞は驚いてしまう。彼女の謝罪の意味がわからないのだ。
「メイナ、どうして謝るの?私はメイナが居てくれてとても嬉しいのに。謝る必要なんてない」
「私は、あなた様がハーフフェアリというだけで、存在を汚らわしいものだと思っていました。そして、シュリ様は異世界の方なので、王家の血を汚すのではないか、と言われているのです」
「そういう、事だったのね……」