囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。
その後、夫妻との話しでお付き合いの件を進められる事はなかった。その代わりに朱栞にとって喜ぶべき情報を貰えたのだ。
それが、スペインの絵本や夫妻が息子に読み聞かせた物語だった。朱栞は、それをしっかり聞き取り、手帳にメモをする。すると、あまりに真剣な様子だったようで夫妻は笑っていた。
そして、パーティからの帰り道。本屋に寄り買い求めたのだ。今は大きな本屋も夜遅くまで営業しているのは、朱栞にとって心強い。お目当ての本達を見つめ、朱栞はニッコリと微笑んだ。
帰宅するとすぐにお風呂で体を温め、寝る直前までの準備を整えて、ベットに座る。
そして、朱栞は買ってきた本から1冊を選んだ。表紙はシンプルな洋書だ。スペイン語で書かれているが、「人間と妖精の物語」と書かれている。どうやら伝書をもとにした、ファンタジー小説らしい。少し前に書かれたものだが、人気作のようで今でも読まれているようだった。けれど、日本語に訳されたものはなく、朱栞も知らない作品だった。
「これを伯爵夫妻は読んで差し上げていたのね。懐かしそうに話していたからきっと、息子さんがお気に入りだったのかな……」
そんな風に思いながら、表紙を捲った。
それからはあっという間に時間が過ぎていった。妖精と人間のいざこざがあり、一時は人間は妖精を殺してしまったり、妖精も人間を騙したりと、対立関係にあった。けれど、大干ばつが起こり妖精は生きる場所を、人間は食べるものを失いそうになり、協力する事となった。人間は知恵を、妖精は魔法を使った。そのうちに、人間にも稀に魔力を持った者が生まれ、その人間と妖精が契約する事で、強靭な魔法を使える事がわかり、干ばつを乗り切る事が出来たのだった。