囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。



 確かに自分の希望通りだけでは契約ではないはずだ。
 それに、彼の悲しげな顔は、どうも自分が虐めているような気持になってしまうのだ。そして、申し訳なく。
 その哀愁さに、朱栞は「それぐらいなら」と思わず言ってしまう。と、彼のシュンとした表情は、雨上がりの空のように晴れ晴れとしたものに一瞬で変わったのだ。
 そして、先程よりも力強くシュリを抱きしめたのだ。


 「ラ、ラファエル様っ!?く、苦しいですよ」
 「あぁ、ごめん。でも、本当に嬉しいんだ。ずっと、君に触れる事を我慢していたから。婚約すれば、君に触れられると。君に認めて貰えるような男になるよう、努めていくよ」
 「ラファエル様は優しすぎるのです。もう少しわがままを言った方いいぐらいです」
 「我儘になれば、君は俺に惹かれてくれるのかな?」
 「えっと、それは、その………」


 我儘になってラファエルなど想像できないが、少し見てみたい気もする。
 だが、きっと優しい彼だからこそ王子として、この場所をまとめ上げているような気がする。朱栞が返事に困っていると、ラファエルは少し意地悪な顔つきで「じゃあ、1つだけ我儘を言おうかな」と、さっそく提案してきた。


 「な、なんでしょうか?」


 恐る恐る返事をしてしまう朱栞。
 もしかして、「やっぱり先程の契約は撤回で、キスさせて」と言われるのではないかと思ってしまったのだ。
 するとラファエルは、やはりその通りだったのかゆっくりと朱栞に顔を近づけてきたのだ。朱栞は体を震わせ、その後に固まってしまう。すると、耳元に彼の唇が近づいたのがわかる。
 朱栞は恥ずかしさのあまりに声が漏れそうになるのは必至に堪えた。


 「俺の事をラファエル様じゃなくて、ラファエルって呼んで。そして、敬語も禁止で気軽に呼んで欲しい」
 「え・・・そんな事でいいんですか?」



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