囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。
予想外の事に朱栞はきょとんとすると、ラファエルは「もっとすごい事がよかった?」と言って笑っていた。
「じゃあ、呼んでみて」
「は、うん。えっと、ラファエル………?」
「………」
「………」
2人は無言で顔を見合わせたあと、お互いが真っ赤になっているのがわかり、クスクスと笑ってしまった。想像以上にくすぐったい感情に襲われたのだ。
「これは嬉しいけど、少し照れる……」
「私は慣れるまで、緊張しちゃいそうです」
「早く慣れて欲しい気もするけど、恥ずかしがる君を見るのもいいね」
「ラファエル様は少しずつ意地悪になっているような気がします」
「そんな事はないよ。もしそうだとしたら、シュリがかわいいからだね」
そんな話しをしながら、ラファエルと朱栞は婚約の儀をリラックスをして臨むことが出来た。
真っ白な祈りの聖堂で、集まった人達に婚約の報告を行った。
大きなステンドグラスには、たくさんの妖精たちがおり、空や海、そして森を自由に飛び回る姿が描かれていた。今の時間は太陽が出ていない夜だ。昼間ならば、光りが差し込み、ステンドグラスの色とりどりの影が聖堂内に落ちるのだろう。今度はそれを見てみたい。そう朱栞は思った。
ラファエルは集まった人々に、朱栞が異世界人である事、そして記憶を失っていない事を伝えた。すると、人々は歓声を上げ喜んでくれた。「ようこそ、シャレブレへ」「歓迎致します」と、拍手をしたり、手を振ったりしてくれた。朱栞は戸惑いこそあったが、ゆっくりと頭を下げると、「何て奥ゆかしいんだ」「魔力も高いのに、謙遜をするなんて」と、何故か褒められてしまうほどだった。
「もう1つ報告がある。このシュリ・クガは今までにない存在となった。人間と妖精のハーフ。ハーフフェアリとしてこの地に生まれたのだ。そして、大きな魔力を持っている。そして、この者と私の契約妖精となった」
そこでも聖堂内を割れんばかりの拍手が起こった。
けれど、ラファエルが小さく手を上げ、話を続けるとすぐにそれは止む。
静けさが戻った聖堂内に、またラファエルだけの声が響く。