囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。
14話「妖精、煩悶する」
14話「妖精、煩悶する」
★☆★
「おい、聞いたか。あの話」
「あぁ、あれって伝説じゃなかったのかよ。作り話だと思ってたよ」
「ほとんどの奴がそう思ってただろうな」
日の光りを浴びて生きていく人間や妖精はほとんど知る事がないだろう。
闇の世界で生きる者で一時期噂になっていた事件を。
人間と妖精のハーフ。それが高値で売れたという話だ。
驚くことに、それは10億ウィルで売れたという噂だ。
1ウィルが元の世界の通貨で100円ぐらいの価値なので、約1000億円という事になる。
けれど、その姿を見たという者はほとんどいないのだ。そのため、デマだと思っている奴がほとんどだった。
「それと同じハーフフェアリまた出て、王子と婚約だと。王子も売る目的なのかな……」
「お前みたいな奴隷売りとは違うだろうよ、あの真面目王子様がそんなお酷い事はしないだろーな」
「だよなー。昔のハーフフェアリは死んだんだろ?なら、あのハーフフェアリ欲しいな。奪えれば一生遊んで暮らせるんだぜ」
「あのお綺麗な見た目と魔力、そして異世界人でハーフフェアリ。そんな条件揃いなら10億ウィル以上の価値が出そうだが、王子相手に奪えるとは思えないな。しかも、王子と契約したんだろう。無理だろ」
「だよなー。はー、ハーフフェアリ、そこら辺に落ちてないかな」
「落ちてるはずないだろう。さっさと今日のカモを捕まえに行くぞ」
そういうと、2人の男は隠れ家から渋々出ていこうとした。
が、隠れ家の一番奥の薄汚いベットで横になっていた男がその2人に声を掛けた。
「おい、今日は俺もついていく。それと、その話。詳しく聞かせろ」
時々聞くハーフフェアリの噂。
全く興味はなかったが、ある事が気になった。
10億ウィルは確かに興味はある。
けれど1番興味があるのは、美人で能力があり、立場も高い。そんな気高く、この国の王子に選ばれるほどの女、という事だった。
「……その女はどうやって泣くんだろうな」
それを想像するだけで、気持ちが高まっていくのを感じた。
楽しい事が起こるかもしれない。それは金以上の価値だ。
その男はニヤリと笑い、その場所から体を起こしたのだった。