囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。
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婚約の報告が終わった後は、城に戻って食事をすることになった。
いつもならば、朱栞の部屋でとっていたが、この日からは広間で食事をする事になった。
といっても、この部屋で食事をするのはラファエルと朱栞だけだ。
豪華な家具が並んでるのだろうと思ったが、その部屋はとてもシンプルなものだった。
木製のテーブルや椅子は、繊細な彫刻が施されており、テーブルクロスの刺繍が入っていた。確かに一点一点は高価なものだろう。それに、他の家具はランプや数点の絵画だけで、必要最低限のものしか置かれていなかった。それでも、大きな窓や重そうなカーテンは、やはり豪華だった。
「シュリ。食事の前に俺の補佐官を紹介するよ」
ラファエルの後ろに控えていた見知らぬ男。その男は婚約の報告の時にも彼の傍にいた。気になってはいたが、婚約の事でいっぱいいっぱいになっていたので、きっとこの場になってしまったのだろう。
「ラファエル様。私は紹介などされなくとも……」
「この者は、リト。俺より年上で少しお堅いが、優秀な側近だよ。困ったことがあったら、リトに相談するといい。もちろん、1番に俺に話して欲しいけれどね」
「初めまして、リトさん。私は、シュリ・クガです。まだまだこの国の事は無知ですが、頑張って学んでいきたいと思っております。よろしくお願いします」
朱栞はリトと呼ばれる男に丁寧にお辞儀をする。
が、朱栞を見るリトと視線は鋭かった。
濃い緑色と灰色が混ざったような不思議な色の髪をしている彼は、鋭い目つきでこちらを見ていた。長身のラファエルよりは小さいものの背が高い彼に睨まれると恐怖感が増してしまう。リトは、細身ながらも体つきはがっしりとしているのがわかる。長いコートで隠れているが、両腰には短剣が納められており、彼からも高い魔力を感じられた。きっと彼も妖精と契約をしているのだろう。