囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。
15話「妖精、王子との初めての夜」
15話「妖精、王子との初めての夜」
朱栞は、今日まで起こったことを考えていくうちに、不思議に思ったことがあった。
王族の親族であるラファエルが、神聖な妖精とのハーフである朱栞と婚約を結ぶ事を、懸念しているのは、王族側だと言う。そのため、ラファエルの婚約を反対しているのも、ラファエルの部下達なのだろう。そのため、彼に一番近い側近のリトも彼の気持ちを無視し反対していた。自分の主であるラファエルへと意見するほどの事らしい。
それなのに、何故シャレブレ国国王がラファエルの婚約を認めたのか。
朱栞はその理由がわからなかった。
それほどまでに朱栞を汚らわしい存在として見ているのに、国王だけは婚約を賛成してくれたのか。
ラファエルが、国王に報告していないで勝手に進めたこと、という場合もあるが彼は「国王の許可がおりた」と話していたし、国王の意見を無視するとは思えなかった。
そして、それとは別に不思議に思う事がもう1つあった。
それは、朱栞がここに呼ばれた理由だ。
朱栞は元の世界では、バイリンガル秘書として、母国語以外の言葉を使い企業と取引のお手伝いをする仕事をしていた。そのため、外国語を複数取得しており、社長や大手企業などにも知り合いが多くなってきたのが自分の武器でもあった。
けれど、異世界に来てみたらどうだろうか。
元の世界の言葉はほとんどが使えない。資料も、全ての言語を精人語にするために処分されたという。昔の貴重な資料を解読する事は出来るかもしれないが、ラファエルが話せるスペイン語以外となると、日本語と英語、多少の韓国語ぐらいになる。異世界に移動する際に持ち込めるものは持っているものだと言うのだから、本当に資料が欲しければ伯爵夫妻が辞書でも持ち込んでしまえば、すぐに解読出来てしまうはずだ。転移魔法は年に数回ほどしか使えないとのことだが、それは可能だろう。
となれば、自分はどうして異世界に呼ばれたのか。朱栞は謎なのだ。
やはり、ラファエルが自分を見初めたからなのだろうか。