囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。





 苦難を乗り越えた先には幸せが待っているはずだが、それを朱栞はまだ知らなかった。
 続きを読む前に、本を読んだままうたた寝をしてしまったのだ。
 けれど、朱栞は豊かな自然のなか、妖精と人間が暮らしている世界で暮らす夢を見ていた。その国の名前を聞き、朱栞は聞いたことがあるな、と思いながらも神秘的で魅惑のある妖精と過ごすことに夢中になっていて、それを考えることを止めてしまった。






 しばらくして、寒さを感じた。
 その瞬間に意識が現実世界に戻った。あぁ、布団をかけなければ。と、思ったがどうも体に触れる感触が違う。ふわりとした感触はなく、しっとりとして固く、少しくすぐったい。
 朱栞は、この感覚に覚えがあった。
 公園や河川時期でごろりと体を倒した時と同じなのだ。

 朱栞は不思議に思い、ゆっくりと目を開ける。と、そこにはつけっぱなしだった部屋の電気も、白い天井も、お気に入りのベットの姿もなかった。
 朱栞を出迎えたのは、雲ひとつない青空と、黄色の花達。


 「え………ここは………どこ、なの………?」



 そこには、朱栞が見たこともない景色が広がっていたのだった。




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