囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。
「シュリ?考え事かい?」
「え、あ………いえ」
曖昧な返事になったのは、考え事を中断されたのが原因ではない。
目の前のラファエルの姿が、あまりに色気があり刺激的だったからだ。
彼は元の世界でいうガウンのような服装だったのだ。朱栞が夜着として与えられたシルクのような素材と同じで、艶のある布で作られていた。上下ゆったりとしたつくりになっており、上は前が少しはだけている。しかも、お風呂あがりで、少し髪も濡れているようだった。
ただでさえ、彼の顔は整っており異国の不思議な魅力があるのに、今はそれが増しすぎている。
婚約したのだからと、この日から朱栞はラファエルの部屋で夜を過ごす事になったのだ。「そういうのは結婚してからではないか」とメイナに訴えたが「シャレブレでは婚約した者でも大丈夫ですので」と言われてしまったのだ。
契約上、彼とそういう関係にはならないとわかっていても、やはり一緒に寝るとなると緊張してしまう。ラファエルが部屋に帰ってくるまで、落ち着かせるために真剣な考え事をしていたはずだが、どこか上の空だった。
ラファエルの寝室は予想よりも小さかった。けれど、寝るだけの部屋となれば十分なもので、元の世界の朱栞の部屋の5倍以上はあった。天井付きのベットはキングサイズよりも大きく、窓には絨毯に使いそうなほどの豪華な刺繍が施された布が使われていた。いたるところに金や宝石が使われた家具は「曾祖父が好きだったそうで、そのまま使ってるだけだよ」と、ラファエルは笑っていた。ラファエルはシンプルな部屋が好きなようで、「もっと狭くて、物がない部屋でいいんだけれどね。あるものは使った方がいいだろから」とあまり物に執着がない様子があった。そんな話を交わしたのは、少し前の事。