囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。
16話「妖精、嘘をつく」
16話「妖精、嘘をつく」
★★★
この時間を邪魔されたくない。
やっと手に入れられた彼女と柔らかくて穏やかな時間。ラファエルはずっと夢の中にいたかったけれど、それは出来なかった。
部屋の外にアレイが待機しているのがわかったのだ。あんなにも朱栞を敵視していたのに、こういう時は気を使ってくれる。そういうところが憎めないのだ。それと共にいるのは、リトだ。何かあったのだな、とすぐに理解したラファエルは朱栞を起こさないようにベットから起き上がった。温かなぬくもりと彼女の穏やかな寝顔はラファエルをベットから離れたくないと思わせる。
「ごめん……すぐに戻る……」
ラファエルと消えそうな声で、そう囁くと朱の髪にキスを落とした。
キスはしないと話したけれど、彼女が寝ていてしかも髪ならば大丈夫だろう。それに我慢出来るはずがないのだから、仕方がない。
ラファエルはゆっくりとベットから降り、歩きながら身なりを整えて寝室を出た。
「夜分遅くに申し訳ございません、ラファエル様」
「いや、いい。リトとアレイ、遅くに悪いな」
「お楽しみの時間に悪かったな、王子様」
「……からかうのはやめてくれ、アレイ。それで、何があった」
ラファエルの質問に答えたのは、もちろんリトだった。まっすぐに背中を伸ばし、姿勢を正したままに、リトは報告してくれる。
彼はラファエルに忠誠を誓っており、かなり誠実に仕事をこなしてくれる。
ラファエルのためなら危険な事も厭わない所があるのが心配だった。