囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。
17話「妖精、初デートをする」
17話「妖精、初デートをする」
「シュリ、今日は町に行ってみようか」
婚約した次の日。
ラファエルは朝食時にそう誘ってくれた。メイナは驚いた様子だったが、その誘いは朱栞にとっては嬉しいものだった。シャレブレ国に来てから半月、もう少しで1ヶ月ほどになるが、朱栞は城の外には出たことがなかった。部屋の窓から城下町を見るだけの日々だったので、朱栞は心踊った。
後ろに控えていたリトは、「ラファエル様ではなくメイナに行かせればよろしいのです」と反発していたが、ラファエルに「デートなのに、一緒に行かなくてどうする」と言われてしまってはどうすることも出来なかったようだった。
朝食を早めに済ませた朱栞とラファエルは、支度を終わらせて出掛ける事となった。朱栞は自室で着替えを済ませて、メイナは留守番になった。「楽しんできてくださいね」と笑顔で見送ってくれる彼女だが、ラファエルの後ろにはリトが立っていた。
「………リト、せめて隠れてついてきてくれよ。後ろについてこられては、デートにならないからな」
「それでは護衛できません」
「俺とおまえではどちらが強いのだ」
「………ラファエル様です」
「わかったなら、俺の言った通りにしろ」
「……かしこまりました」
リトは納得できないようだったが、ラファエル達から離れていき、朱栞が見た限りでは彼の姿は見えなくなった。
「シュリ、行こうか。本当は手を繋ぎたいけれどその姿なら仕方がないからね。俺の手や肩に乗るかい?」
「いえ、飛行の練習にもなるので、大丈夫です」
「わかった。疲れたら言ってくれ」
朱栞がまだ慣れない飛行でゆっくりと前に進むとその隣をラファエルが早さに合わせて歩いてくれる。
しばらくすると飛ぶのにも安定してきた朱栞を見て、ラファエルは話をかけてくれる。