囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。
「シュリ。そんなに気にしなくていいんだ。俺も気づかなかったから。浮かれすぎていた、ごめん」
「ラファエルは、人間です。けれど、私は半分妖精の血が流れているから気づかなきゃいけないことがあったんですよね?」
朱栞の隣をラファエルが心配そうな表情を浮かべながら飛行している。
けれど、朱栞は悲しげな表情ではなく、必死な姿を見て彼はにっこりと微笑んでから、朱栞の質問に答えた。
「本来、妖精は人間よりも視力がずば抜けて高いんだ。かなり遠くまで見える。その目的が魔力を持つ存在であれば更に気づくのも早くなるそうだよ。それが自然の力なのかもしれないね」
「じゃあ、その遠く離れた子どもを私が見つけられたはずなのに、いつまでも気づかなかったからアレイは怒ってしまったんだ………」
「そうだと思う。けれど、本当にそこまで気にするような事じゃない。1か月、君はよくやっている」
「だけど、アレイや他の妖精とも関わるべきでした。異世界人を妖精は嫌っているという話を聞いて、自分でも気づかないうちに少し怖がっていたのかもしれない。今度からは妖精と話していかなきゃ」
自分に言い聞かせるようにそういうと、ラファエルは「わかった」と頷いてくれた。
それはとても満足そうな笑みだった。
そして、朱栞の体を優しく両手で捕まえると、一気に加速して飛び始めた。
「ラファエル?自分で飛ばないと練習の意味が………」
「今は子どもの救出が最優先だからね。急がないといけない。それに、ありがとう。シュリ」
「どうして、ラファエルがお礼を言うの?」
「アレイはあんな強気な性格だろう。だから、人間とも妖精ともトラブルになる事が多いんだ。彼女は言い方がきついけれど、思いやりもある。なかなか言えないことも気づいた方がいいことはしっかり伝えてくれるだろう。まぁ、言い方がきついのだけれども」
彼の手の中で、ラファエルを見え上げると、苦笑いをしていた。
けれど、彼の笑みはとても晴れやかだった。
「だから、あんな風にキツく言われても、言葉の意味を考えて向き合おうとしてくれたのが嬉しいんだ。アレイは、俺の大切な契約妖精。契約がなくても、彼女はいい仲間だと思っているんだ。だから、これからもアレイと仲良くしてやってほしい」
「えぇ、もちろん」