囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。
ラファエルの願いに、朱栞は力強く頷いた。
そして、風が向かってくる正面を向いて、じっと遠くを見つめる。
妖精なら、見えるはず。「出来る」と思って先を見据えると、先程とは全く違う視界が広がった。アレイが言った遠くを見ることは出来なかったが、先を飛ぶ彼女の姿をはっきりと見ることが出来たのだ。これは、先程までの視力では絶対に見えるはずのない距離だ。
「ラファエル!アレイが見えるっ!」
嬉しさのあまり飛び跳ねてながらそう言い、くるりと彼を見る。
すると、ラファエルは顔を近づけにっこりと微笑んだ。
そこでハッと気づく。はしゃぐなんて、恥ずかしい。いい年の女性が何をやっているのだろう。そう思い、一気に恥ずかしくなってしまった。
けれど、そんな事は全く気にしていないのか、ラファエルも「すごい、もう見えるなんて。さすがはシュリだ」と同じテンションで返してくれる。
その素直さと純真さ、そして優しさをまじかで感じ、朱栞は胸の奥が温かくなり、鼓動が早くなっているのに気づいた。
けれど、その感情の正体は深く追求しないように、気づかないようにしなければ。
そう冷静に思ったのだった。