囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。
19話「妖精、夕暮れを飛ぶ」
19話「妖精、夕暮れを飛ぶ」
アレイにようやく追いついたラファエルと朱栞は、すぐに「妖精の事知ろうとしない私の責任だわ。これからは、いろいろ教えてね」と伝えると、アレイはあんぐりとした表情で朱栞を見つめた。そして、「面倒な時は教えないから」と返事をした後、光をまとって姿を消した。
ラファエルが言うには照れ隠しらしい。そんな少女のように純粋なアレイが、朱栞はかわいいなと思った。
「さて、アレイが見つけた少年はあそこだね」
「………魔物は、近くに魔力の気配は感じないね」
「きっと逆の方へと向かったのだろう。大事に至らなくてよかったよ。けれど、こんな遠くまで子どもが一人で居るのは危ないから町の方へと送り届けよう」
ラファエルの提案に朱栞も頷いて同意を示した。
ラファエルは高度を下げて、草原にあった大きな岩に座って何かをしている少年へ声を掛けた。
「君、何をしていんだい?」
「あ!ラファエル様と、ハーフフェアリ様だ!」
天から降り立った2人を少年は笑顔で歓迎してくれる。作業を中断した彼の手にはペンと紙が束ねられた冊子を手にしていた。どうやら、何か書き物をしていたようだった。
「絵を描いていました。新しいペンを買ってもらったから、この草原を描いてみたかったんだ」
「見せてくれるかな?」
「はい、もちろんです」
そう言って少年は自分の書いた絵を見せてくれた。
そこには大人顔負けのリアルな風景がが描かれていた。線画で黒一色だったが、その風景がすぐ想像でき今でも風を受けて草花が揺れそうなほどだった。
「すごい、とても上手ね」
「あぁ、本当に。君は絵が大好きなんだね」
「ありがとうございます!すごく好きですっ!」