囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。



 朱栞とラファエルは顔を合わせて微笑む。同じ考えだったのが嬉しかった。
 それをホープは驚いた顔を見せた。「本当にいいの?」と何回も聞いた後、「ありがとう!」と2人の笑み以上の笑顔を見せてくれた。

 その後、ホープはニコニコしながらペンを走らせていた。
 細かく動くペン先から、繊細な絵が産まれていくのを、感心しながら見つめた。だが、朱栞は気になることがあった。それは、先程ホープに見せてもらった絵の中にあった。
 彼が真剣に絵を描いているのを邪魔をしたくなかったが、朱栞は恐る恐る問いかけた。


 「ホープ。絵を描きながらでいいから聞いて欲しいんだけど。さっき見せてくれた絵の中に、足は魚で上半身は人間の絵があったでしょ。あれは、ホープが考えたのかしら?」
 

 彼の自由な絵の中に、小さくだかそんな絵があった。そこに描かれていたのは、元の世界でよく見られるような女性ではなく、上半身は男性のものだった。けれど、それはどこから見ても人魚だったのだ。メイナは、人魚姫の話をした時に人形の事は全く知らなかった。それを魔物だと思ったぐらいだ。
 それなのに、何故彼は知っているのだろうか。
 メイナは知らないだけで、元の世界と同じような伝説がこの世界にもあるのかもしれない、と思ったのだ。


 「僕が考えたんだよ。面白いでしょ?でも、海はとっても広いって聞いたことがあるから、知らない生き物がいるかもしれないなーって思ったんだ」
 「えぇ、素敵だわ。でも、もしかして、人魚の事を知っているのかと思ってしまったわ」


 やはり、シャレブレ国には人魚の伝説は残っていなかったようだ。
 元は同じ世界だとしても、違いはあるものだ。


 「人魚?そっか、ハーフフェアリ様は異世界人だったんだよね。もしかして、本当に半分お魚の生き物がいたの?」
 「実際に見た事がある人がいるわけじゃないんだけど。伝説として残っているの。本当か嘘なのかわからないけれど。「人魚」と言われていたわ。そのほかにもいろんな架空の生き物がいたわよ。羽と角が生えた馬や、角がある人間、竜とよばれる巨大な生き物とか。いろいろなお話があるわ」
 「すごい!!いっぱい聞いてみたい」

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