囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。
初めて聞く異世界の話に、興味津々になってしまったホープは、すっかり手が止まってしまっていた。そんな様子をラファエルは微笑ましく見ていたが、ゆっくりと口を開いた。
「ホープ。まずはその絵を完成させよう。それから、シュリから話しを聞くと言い。俺も聞きたいと思っていたんだ。今日は3人で物語を楽しもうじゃないか。夕暮れの空を飛びながらはどうだい?」
「いいの?じゃあ、お母さんに聞いてみないと!あ、その前に絵を描いちゃうね!待ってね」
そういうと、彼は先程よりも早く、そして賢明に手を動かしていた。
それでも、手を抜くことはなく真剣に描くところが彼らしい。
無事に草原の絵を描き上げたホープを抱き上げたラファエルと、ラファエルの肩に乗った朱栞は夕暮れの赤に染まる空をゆっくりと飛んだ。
そして、「物語会」と呼ばれた穏やかな時間を、3人で過ごした。
朱栞は、ラファエルとホープの真っ赤に染まり輝く瞳を見つめながら、心躍る物語たちをゆっくりと紡ぎ続けたのだった。
それは陽が落ちて朱栞が人間の姿に戻るギリギリまで続いた。