囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。




   ★★★



 魔法と言っても種類はそれぞれだ。
 思った通りの事を魔法で行うためには魔力が必要になる。

 人を一人殺すのと、街全体を焼き滅ぼすのでは、必要となる魔力の大きさが異なるのは当たり前の事だった。


 「ラファエルよ。それではシャレブレの祈りの聖堂にまで、奴らは現れたののか」
 「はい。夜だと言っても、日が暮れて間もなくの時間帯です。確かに聖堂は閉まっており人気はありませんでしたが、それでも表通りには人はたくさんいましたので、かなり大胆な犯行でした」


 今、ラファエルが話している相手。
 それは、鏡の中に映る者とだった。と、いってもそれは自分自身ではない。
 そこにはシャレブレ国国王の姿があった。シャレブレ国王は、本土に居る。もちろん、ラファエルも自分の領地にいるので、遠く話せた場所にいる。
 けれど、鏡に姿を映すことで、会話をする事が出来るのだ。これはかなり高度な魔法であり、それを行っているのは、国王とラファエルの契約妖精の魔力のおかげだった。
 しかも、鏡を通じての会話はもちろん2人しか聞くことは出来ないので、内密な話をするときはかなり有効であった。


 「それで被害は?」


 国王は厳しい顔つきでラファエルに質問をした。
 シャレブレという大国を纏める今の国王は若い。ラファエルの年の離れた兄のような存在であった。肩まで伸びた髪はダークブラウンで、その髪を後ろで縛っている。顔は少し強面のため年齢よりも年上に見られる。
 そして、若い国王だとしても一国の長だ。彼は親戚でもある王子に厳しい。いや、自分にもそしてどんな相手であっても厳しい。そのため、ラファエルは国王に謁見する時は、いつも肩に力が入ってしまう。
 しかも、今回は全て良い報告ではない。ラファエルは、眉を下げて小さく頭を下げた。



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