囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。
そして、もう1つは、自分の役目についてだ。
リトは、異世界人は何か目的があってこのシャレブレの世界に連れてこられるのだ。
記憶を失わなかった異世界人は貴重である。それならば、シャレブレでの自分は何が出来るのか。それをずっと考えていた。
自分のスキルは語学と様々な物語や伝承の知識。そう考えていくと、この世界での元の世界の語学は全く役に立たない。となると、残るものは1つだ。
メイナやホープに元の世界の物語を聞いてもらったが、どちらもとても喜んでくれた。性格や趣味によって違うかもしれないが、それでも好きになってくれる人はいるだろう。
この世界では、自由に物語を想像し、作り上げて本にしていくことが少ないようだった。それならば、本によって笑顔になったら、ワクワクしたり、人の気持ちを考えられるようになったり、異世界人について理解を深めてくれたり。そんなきっかけにはならないだろうか。
そんな風に朱栞は考えついていた。
昔に来た医者のように新たな治療法や薬を伝えたり、畑や海への知識を教えたり、機械を作ったりと、直接的に生活を豊かにする事は教えられないかもしれない。
けれど、仕事の合間や少し元気がなくなった時、余暇の時間を楽しみに出来るものきっと必要な事だろう。
自分に出来る事は元の世界の物語を伝えていくことではないか。
そう結論づいたのだ。